乾癬ヘアサロン

髪のプロと学ぶ、乾癬と頭皮とケアのお話

頭皮と髪のプロだから知っておきたい
乾癬かんせんの知識

第2回「乾癬」の患者さんに対して、美容のサービスを提供する際の注意点とは?

東海大学教授 馬渕 智生先生 / ACQUA 小村 順子さん

東海大学教授
馬渕 智生先生

ACQUA
小村 順子さん

 「乾癬」は、免疫バランスの異常がおこり、主に皮膚に症状が現れる病気の一つです。そして、決して「人にうつる病気ではない」ということを、前回、お伝えしました。
前回に続き、「乾癬」の専門医である東海大学医学部専門診療学系皮膚科学 教授・馬渕智生先生と、美容師を代表してACQUA ディレクターの小村順子さんとの対談をお送りします。
今回は、「乾癬」の患者さんに対して、美容のサービスを提供する際に、気をつけたいことを中心にお話していただきます。

カットやシャンプーなど、さまざまな施術の中で、皮膚を刺激したり、こすったりしないように、施術していただけたら、安心です。

東海大学教授 馬渕 智生先生

美容師の役割は、ヘアデザイナーだけではない。
ヘアドクターとして、お客様の頭皮の状況に合わせて、適切な施術ができないといけないのです。

ACQUA 小村 順子さん

頭皮は、爪を立ててこすらない。
それが「乾癬」には、一番大事なこと。

―――小村さんのお客様の中で、「乾癬」と思われる方はいらっしゃいましたか?

小村  馬渕先生のお話を伺いながら、思い返していましたが、円形脱毛症やアトピーの方は日常的にいらっしゃるんですけど、「乾癬」のような症状の方というのは記憶にないです。もしかしたら、患者さんは、美容室を嫌厭されているのかもしれませんね。でも、髪を切らないと生活できないので、どこかで切ってはいると思うんですけど……。

馬渕 おそらく、「乾癬」を発症する前から知っている理容室か美容室に、こういう病気になったという話をしながら、通われているんじゃないですかね。発症してから、新しく素敵な美容室に行ってみようというのは、抵抗があると思います。

小村 そういえば、えりあし辺りが慢性的に赤い、という方はいらっしゃいますが、フケのようなものが出るわけじゃないので、「乾癬」とは違うのかなと思います。

馬渕 頭皮に「乾癬」ができると、髪に覆われて患部がよく見えないので、一般的なフケと同じように見えます。だから、黒系の服は着れないと、悩んでいる方が多いです。

小村 乾燥する冬は特に大変ですね。でも、一般的なフケは、その方の頭皮に合うシャンプー剤に変えて、洗い方を変えるだけでも、改善することができるので、お客様にアドバイスしています。意外と正しい頭の洗い方が出来ていない方が多いです。お湯だけで、しっかり頭皮をマッサージするだけで、70%ぐらいの汚れがとれて、シャンプー剤の効果が高まります。そして、頭の4、5カ所に軽く泡立てたシャンプー剤を少しずつのせて、まんべんなく泡立てながら、頭皮を動かすようにマッサージするのが、正しい洗い方です。

馬渕 美容師さんのように、指のはらでマッサージしていれば、問題はないのですが、一般の方は、爪をたててしまいます。それが、「乾癬」の患者さんの場合、一番良くないのです。引っかいたり傷つけたりすることで、新しく乾癬ができたり症状が悪化してしまいます。ところで、頭や髪を乾かす時は、どうしたらいいですか?

小村 乾かす時は、ドライヤーで温風を送りながら、根元を起こすようにして毛先に向けて、風をあててしっかり乾かします。そして、荒い目のクシで髪をとかして、キューティクルを馴染ませることで、ツヤが出て髪がきれいに仕上がります。

馬渕 荒い目のクシやブラシがいいですね。そのほうが、頭皮をこすりにくいので。

小村 「乾癬」の患者さんが使うシャンプー剤に、入っていないほうがいい成分というのはあるのでしょうか?

馬渕 一般的に販売されている商品は、問題ないです。シャンプー剤よりも、洗い方が重要です。ただ、使用していて、かゆみや刺激を感じる場合は、やめていただきたいです。

乾癬とは?

乾癬の種類は大きく5つに分類され、全体の約9割が尋常性乾癬です。
皮膚が赤くなって(紅斑)が盛り上がり、表面に銀白色のフケのようなもの(鱗屑)ができて、ポロポロとはがれ落ちる病気。かゆみを伴うこともある。

頭皮と耳にできた乾癬

頭皮と耳にできた乾癬

基本的には「乾癬」の患者さんも、
ヘアカラーやパーマをしても大丈夫。

―――前回の中で、外的な刺激が加わりやすい部位に、「乾癬」は出やすいというお話がありましたが、なぜ、頭皮やおでこなどにも「乾癬」の症状が出るのでしょうか?

馬渕 頭皮の場合は、髪の毛が伸びてくる、その刺激で「乾癬」ができるとも言われています。頭皮全体に発症する方もいますが、小さいものが何カ所も出る方も多いです。ひどい症状になると、髪が抜けることもあります。でも、それは一過性で、症状が良くなれば、また髪は生えてきます。

小村 そうすると、頭皮に「乾癬」がある場合、髪を伸ばしたほうがいいのですか?

馬渕 そこが難しいところです。

小村 短いとすぐ髪を切らないといけないから、頭皮をこすりやすくなると思います。

馬渕 私の考えでは、髪は長めのほうがいいと思います。ただ、患者さんは、塗り薬を使う場合は1日1~2回塗らないといけないので、髪は短いほうが、塗りやすいと言われます。

小村 話は変わりますが、髪を染めたい、パーマをかけたい、と「乾癬」の患者さんに言われた場合、施術しても大丈夫でしょうか?

馬渕 一般論としては、施術していただいて構わないです。万が一、施術してトラブルが起きた場合は、続けないほうがいいと思います。どういうものを使ったかの情報を持って、皮膚科の専門医に行っていただければ、アレルギー検査などができますから、それでアレルギーがあるようでしたら、その施術は受けられないということになります。

小村 頭皮にトラブルがある場合、施術しない選択をしがちですが、私はできるだけお客様のご要望に応えたいと思っています。だから、私が20年担当しているお客様でも、毎回、肌や頭皮の状態はチェックしています。何か気になることがあれば、「今日はどうしたんですか?」とお客様に伺います。頭皮を見ることも、ヘアドクターとして大切なことだと思っています。

馬渕 そのように接していただけたら、理想的ですね。

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